連作を通じて、作者にとっての“名探偵像”を描き出してみせた意欲作。
結末では、冒頭に掲げられた、“名探偵は生き方ではなく、宿命である” ――という文章の意味が深く腑に落ちるある趣向が仕掛けられています。
※収録されている各短編の内容については「コメント」をご参照ください。
「天才・龍之介がゆく!」シリーズの第3弾。
138頁という薄さで、中篇というべき一冊だろう。値段も安い。
トリックに切れがある。「おお!」とびっくりさせられる。しかも腑に落ちる。とはいえ、小粒な印象はぬぐえない。
悪くない作品だが、過剰な期待は慎むべし。
絵画修復士・御倉瞬介を主人公とした六話を収録した連作短編集。
柄刀氏は本格ミステリー魂が強すぎて、しばしば小説としての出来を少し損なっている。
本作は本格ものももちろんあるが、そうでは無い作品もある。
ジャンル小説色が薄まり、バランスが非常に良い短編集となっている。
ピカソ、フェルメール、モネ、安井曾太郎、デューラーなどの名画に秘められた犯罪や因縁。
それらを思慮深い審美眼をもって理論的に解体していく。
ロマンチストな面もある柄刀氏らしい作品だった。
北森鴻著「深淵のガランス」も絵画修復士を主人公としたミステリーだ。
こちらは絵画の資産価値に起因する暗部や贋作を扱っている。
対比して読むとおもしろいかも。
柄刀さんの本格ミステリは、私なんかには難しすぎるというのが 他の作品を何作かを読んでみての感想でした。 雑とか手抜きとかは感じたことなかったけど。
そんな柄刀さんの絵画をモチィーフにしての短編集。絵画って割に軽く好きなので、買ってみたら。
いや、面白かった。絵画の蘊蓄と謎に現代のミステリが絡むというお約束の構成ですが、一話一話どの作品も「ああ」「ああ、そうだったのかあ」と ずんずん来ました。
いいもの読んだーって感想です。 これからもこのシリーズ読みたい。 満足。
このシリーズも本編だけでも50巻を超えました。毎回毎回素晴らしいミステリーの短編が紹介され、非常に楽しみなアンソロジーになっています。今回も、粒ぞろいの10作品が所収されています。
「ラストドロー」(石田衣良)「蕩尽に関する一考察」(有栖川有栖)「招霊」(井上夢人)「盗まれた手紙」(法月綸太郎)「瑠璃の契り」(北森鴻)「死者恋」(朱川湊人)「絵の中で溺れた男」(柄刀一)「走る目覚まし時計の問題」(松尾由美)「神国崩壊」(獅子宮敏彦)「Y駅発深夜バス」(青木知己)
どの作品を取っても本格ミステリーの楽しさを満喫させてくれます。
個人的には、「瑠璃の契り」の雰囲気が大好きです。
「蕩尽に関する一考察」「走る目覚まし時計の問題」の犯罪ではない軽さもいいです。
どの作品を取っても実に印象的な作品ばかりでした。
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