このシリーズは著者の描く美しいキャラクター達のあれが「見える」ことが大きなセールスポイントだったはずですが見事に消しちゃってますね。
絵全体をソフトフォーカス気味にしてそれをごまかしているようにも見えます。
マンガ的にはシリーズ中もっとも過激なのですが上の理由でもっとも魅力がない単行本に仕上がっています。(笑)
前作までのクオリティを期待する人はよしておいた方が良いと思います。
「コミックシグマ」に2008-2010年に掲載された短編を発表の逆に並べていますが、違和感は有りません。
今回は前半が近親相姦(姉、妹)、後半が幽霊〜魂の入替物です。
唯登詩樹氏の初期成人漫画時代からのファンですが、ストーリー仕立てはこの20数年基本的に変わらずちょっと不思議な味付けの鬱展開の無い明るい話です。
ただ今回氏の14年振りのモノクロ成年向け作品集である本誌を過去作品と比べて見ると絵の進歩には目を見張ります。ずっとエロく見えると言う事は実は常に絵は進歩、更新されているという事が改めて良く解りました。
特に淡泊だった性器の描写が陰毛も含めてよりリアルになされており、性交シーンに於ける断面図の導入も含め華麗で美しい顔やボディラインとの対比がより劣情をそそります。
同じ作者のフルカラー版コミックの持つ超現実的な美しさに比べてかなり日常的なエロチックさが増しており、成年誌としての実用面はこの数年で最高です。
センターには氏の独壇場である4ページのフルカラーコミックが一編、そしてあとがきがイラスト付き見開きで2ページ収録されています。
(私はボードレールやポーをあまり読んでいません。誤解を与えるといけないので、先に書いておきます) 作者も第一ページ目に書いているので、ここにも書いてしまいますが、基本設定が「漫画の設定」のように非現実的なのですが、違和感がまったくありません。 普通の人は広大でモダンな邸宅に住んでないし、doll達へのお給料も払えません。女の子のようなスタイルも、モデルができる美しさもなく、わたしのように、鏡を見るたびに嘆くことになります。 読んでいると、a dream within a dream(夢の中の夢)のように、魅せられてそれが現実のように感じてしまいます。 それが、この作品の作者の実力なのでしょう。 ただ、読み終わった後、「これは物語なんだ。現実じゃないんだ」と何度も自分に言い聞かせないと、この人工楽園から脱出できず、命に関わります。 十分、お気をつけ下さい。
物語は静岡県H市の老舗洋食屋さんから始まります。 お父さんが病気になり経営が傾いた洋食屋さんの再建に就職を諦めて東京から帰ってきた篠崎花音。 自分の未熟さに気が付いた彼女は2年間の猶予を貰い、食を基礎から学ぶために料理学校に・・・
所謂グルメ漫画とは一線を画した人間ドラマと青春群像が物語の本当の隠し味になっています。原作者の城アラキ先生は「ソムリエ」、「ソムリエール」、「バーテンダー」などの作品でお酒を通して大人の世界を描いてきた方なので、単に料理のレシピの紹介ではなく、文化としての食の物語が作品を奥深くしています。
そして、漫画作者のこばやしひよこ先生の絵が素晴らしい。 花音ちゃん、カワイイ・・・は兎も角として、背景のディテイルにまでこだわった緻密な作画も物語を更に美味しくさせています。 何より絵に勢いがあるんですよね。主人公の篠崎花音に天才シェフ葛城竣一、そして彼らを囲む料理学校の仲間たち。 どのキャラもとても魅力的に立ちまくりです。 主人公のデカ乳だけに騙されてはいけません。
ひよこ先生のスケジュールの都合で、コミック第一巻の後、第二巻まで少し間が開くのが残念ですが、ひよこ先生の直筆のあとがきに添えられたちょっとしたイラストがまた“楽しい”ので許してあげたいと思います。 はやく復帰を!
元々、「ありえない」設定だったのが、2巻になって完璧なファンタジーになっています。 女らしいスタイルに豊かな乳房、アマチュアで女装している者にとって理想そのものです。現実にありえない事を描くのがフィクションのひとつの役割とするなら、この作品はそれをかなり理想的に描いているといえると思います。 ただ、やっぱり男性との...も見たいなとも思うのですが、それは無理?
あと、絵がとてもきれいなので、雑誌掲載時のサイズでカラー原稿はカラーにした、単行本かデータの販売も出版社さんにはお願いしたいです。
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