鹿鳴館時代から始まる貴族の女性になり代わって 米国に留学した女性の物語です。 成り代わりから留学まではかなり泣けました。
この作品は、鈴木商店という小さな商店から日本を代表する大きな商社へと変貌を遂げる成長と
その後の衰退、栄枯盛衰に一生を捧げてきた一人の女性の物語である。
「お家さん」(上巻)では、西洋に押しつぶされそうな日本を必死で自立させようとする商人たちと
神戸の町の活気のある情景が目に浮かぶような描写で読者を楽しませる。
男性は外で働き、女性は内(家庭)で働くという考えがあたりまえであった時代に、若くして
夫をなくした主人公は自分の意志で物事を決め商人たちを動かしていくだけでなく、幼い子供たち
の一人の母親としてもたくましく生きていく様はとても力強い女性という印象を受けた。
強く信念を持って生きていく女性の苦悩と成功、その時代の流れを感じることのできる本だと思う。
久しぶりにおもしろい小説に出会えました。次がどうなるのか、待ち遠しくて、上下巻1週間で読み終えました。 それにしてもこの時代の女とは、哀しい存在でした。良家の子女であっても(だからそうとも言えるけど)、嫁ぐまでは親の庇護のもとにおかれ、嫁いだら夫の庇護のもとでしか生きられない存在。死別したり離縁すれば、戻る実家はあってもまた親の世話になり、次の嫁ぎ先を見つけてもらうのを待つしかない。それがかなわず親に死なれたり実家にいられなければ、ひとりで生きていく術をもてなかったのですから。でも、この小説の沙耶子がそうであったように、ひとりでも生きていけるようになりたい、と願う女性たちの地道が闘いがあったからこそ、女は今の時代を享受できるようになった。たった100年前はこうであった、ということを忘れてはいけないと思いました。
明治、大正、昭和を太くも短く駆けぬけた商社を通して、 歴史と文化と日本人というものをしっかりと伝えてくれる本です。 興味深く読むことができました。
昔、神戸に「鈴木商店」という商社があり金子直吉という人が大会社に育て上げたが、金融恐慌で倒産し、その分社として現在の日商岩井や神戸製鋼等があるということは知っていました。しかし日本を代表する多くの大会社の前身でありながら、鈴木商店がどのような会社であったかはベールに包まれています。本書では「米騒動」時において鈴木商店が焼き討ちにあった事件を中心に非常に詳細な取材を行っており、それに派生して当時鈴木商店がどのような仕事をしており、どのような社風であったか。そしてそこに働く人たちのポジションや派閥がどうであったか。金子直吉がどのように会社を考えていたかが非常にリアルに分かります。いろいろな小説を読んできましたが、ここまで徹底的な取材を行った本は初めてで、非常に感動しました。
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