まるで物語の世界にいるような1枚でした。中でも13番めの「スタニヤン・ストリート」はお勧めです。朗読と曲がとても自然に組み合わさっていました。詩が好きな方や、朗読を聞くことが好きな方は、きっと気に入ると思います。
食文化と暮らしのエッセイストとして活躍する、平松洋子。子供の頃から本に慣れ親しんでいる彼女が、「一歩も動かないのにどこかへ行ける」「本は時空間を突破する魔法の絨毯」……そんな風に、読書の魅力と魔力を独自の視点で描いた名随筆。
口語多用の軽やかな文体と大胆な比喩、鋭い分析と弾けた妄想。それらが渾然一体となった旨みが滲み出ている。そこから伝わってくるのは、著者が本の放つ魅力によって読む場所を選べる真性「本の虫」であること。開高健の『戦場の博物誌』をハンバーガーショップで読むくだりは、その最たるものだ。
随所で綴られる、食にまつわるエピソードがまたいい。無類の食道楽・獅子文六を「がじがじ齧ってみる」妄想や、女優・沢村貞子が26年間もつけていた『わたしの献立日記』をめぐる話は、ページをめくるたびに読書欲と食欲がミックスダブルスで襲ってくる。
個人的に興味深かったのは、第二章「わたし、おののいたんです」での宇能鴻一郎の段。宇能独特の一人称独白体で紡がれた、あの(むかしお世話になった)艶かしい言葉に、著者の見立てで新たな官能が注入されている。その他、山下清、池辺良、室生犀星、虫明亜呂無、坪田譲治、山田風太郎、佐野洋子など全103冊の本の旅へ、新しい発見を道連れに、味わい深〜くエスコートしてくれる一冊だ。
数年前、有料放送で20数年ぶりにこのドラマを見たときには、思わず涙があふれ出たものでした。フラッシュバックとは、まさにこのことで、幼いころの、のん気でお気楽な時代が一気によみがえったのでした。幼い私にとって、このドラマは社会見学のようなもので、社会の縮図を見ているようでした。そして、アニメをバックに歌が流れるオープニングは、このドラマ全体の、人の人情と優しさに包まれた雰囲気を象徴するものでした。このドラマは、笑いと人情のホームドラマですが、主人公の加茂さんが勤めているのは、近代的な建物の大手のアパレルメーカーで、今で言う、当時のトレンディードラマとも言えるのではないでしょうか。私にとって、このドラマは最も思い出深いものです。人生は短く、思い出は人生の宝ですよね。
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