綾辻オマージュのごとき館、 黒死館オマージュのごときペダンチスム、 むむ?自ら名探偵と名乗る名探偵、 あれ?作中作?、と見せかけて……、 ああ、そっちだったか!
本格ミステリの考えうる要素をすべて盛りこんで上手に料理した快作だ。 途中で名探偵に話しかけられたらどうしようと思ってドキドキしました。
殊能先生、さすがです。 早くよくなって気軽に新作書いてください。
作者のデビュー作にしてメフィスト賞受賞作。凡作の多い同受賞作にしては出色の出来。サイコ・キラーの「ハサミ男」が自分の犯行手口を真似て殺された女性の死体を偶然発見するというギャグ的発端から始まって、目くるめく結末まで精緻な構成で読ませる。
自殺未遂を繰り返す「ハサミ男」の真の姿が徐々に明らかになっていく展開、「ハサミ男」が自分の犯した犯行のうち冤罪だけは晴らそうとするナンセンス、「ハサミ男」の冤罪事件の真犯人の意外な正体、"長さん"というデカがいる明らかにTVの刑事もののパロディの捜査陣。これらが渾然一体となって、とぼけたユーモアと乾いた文体で綴られていく。この作者の手腕は新人離れした卓越したものがある。
作者はこの後も、「美濃牛」、「黒い仏」など多彩な作品を発表しており、久々に期待の作家登場という感じがする。人間の深層心理を鋭く抉ったサイコ・キラーものの傑作。
原作本は最後の最後にすごい仕掛けがあって、映像にするのは無理だろ〜と思ってました。どのように映像化されたのか興味があったのでみてみたところ、原作とはやっぱり違ったもののなかなか面白かったのです。ちゃんと仕掛けはあったし(すぐ分かるけど・・・)。というか、麻生久美子がよかったです。
前作の『美濃牛』からの探偵石動シリーズ。 今作の『黒い仏』は本格ミステリーとは言いづらく、意外な展開から賛否両論の作品である。僕は謎解き抜きとしても作品のふいんきや石動と助手アントニオのやり取りなど楽しめたので星5つ。前作が本格派だった為に同じ探偵の話しでこの展開は否の意見を良く聞くが殊能将之は書こうと思えば本格ミステリーをもっと書けると思う。 殊能ファンの僕としては、この作品を見て殊能将之の小説からはなれないでほしいと思います。
うん、面白かった。 トリックの切れ味自体は確かに賛否両論かも知れない。ただ、それを差し引いたとしても十分に評価できると思う。 自殺願望を抱きながら、一方で連続殺人を犯すハサミ男。そんなハサミ男が、次なる事件を起こそうと思った矢先、自分を真似た何者かにターゲットが殺害されていた。そして、その犯人を調査しはじめる。 展開そのものはかなりトリッキーなものの、読みやすい文体で書かれているし、猟奇事件を扱うマスコミなどというものへ対する社会風刺的な部分もある。それでいて、随所にユーモア溢れる表現が出来ており、ニヤリと思えるところも多い。 良い作品だと思う。
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